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「百合が、普通に笑ったり、顔を染めたり、まだ少しぎこちないところもありますが、できるようになっているんです。」
そう、俺のペアである百合はドールである。
彼女が手術されたのは脳の一部と、右腕と両足。
その時、記憶と、感情を示す術を失っていたのだ。
つまり、常に無表情でいた、という事だ。
それなのに突然、正確には『あの日』から、記憶こそ戻っていないものの、感情が表に現れだしたのだ。
もちろん嬉しいことだ、俺としてもそうなるように努力してきた。
だが、いざ可能になったと思うと不思議なのだ。
「先生は、不可能だって言っていたのに。なぜできるようになったんですか?」
「……ふむ。」
厘は少し考えるそぶりを見せると、静かに口を開いた。
「私も、その報告を受けて正直驚きを隠せなかった。実際、百合ちゃんを見るまで信じられなかった。しかしまさか、本当だったとはね。」
「…………」
「嘘をついていた、のではなかったのですね。」
黙り込む俺の代わりに百合が尋ねる。
「ああ。―いや、正確には、できるわけがないと確信していたから。伝えなかったんだ。」
「と、言うと?」
「実は、理論上では可能とされていた。」
「「っ!!」」
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