1*

29/38
前へ
/425ページ
次へ
「……何を一体、拗ねているんだ? 」 布団にすっぽりとくるまり、顔を隠す璃桜の耳に朔耶の弱った声が降ってくる。 さらさらと優しく髪を撫でる感触。 触れる指先からも、朔耶が困っていることが分かる。 でも璃桜はどうしても今、朔耶の顔をまともに見られないと思った。 いくら久方ぶりとはいえ、愛する人との触れ合いは璃桜を溺れさせた。 朔耶は璃桜の身体を一番に考えて、冷静に抱いてくれたのに……だ。 浩峨先生からもあんなに、感じ過ぎないように言われたのに、ゆっくりと時間を掛けて愛されて、結局は我慢なんか出来なくなってしまった。 もう、私ったら母親になる自覚が足りなすぎる。 特に違和感もないし、張りもないし、お腹は大丈夫だと思うけれど、自分が情けなくて堪らなかった。
/425ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11701人が本棚に入れています
本棚に追加