1*

31/38
前へ
/425ページ
次へ
ところが、こちらを伺う端整な顔が思ったよりも間近にあって、驚いた心臓が大きな音を立てて跳ねるから、璃桜は反射的にまた掛け布団の中に隠れる。 「璃桜……? 」 どうしよう、ドキドキする。 今度は別の理由で顔を見ることが出来ない。 それ以上のことをした後なのに、これだけのことでこんなになってしまうなんて、私はどれだけ朔耶さんに恋しているんだろう。 「璃桜 」 小さな吐息(とそく)とともに、掛け布団に手が掛けられた。 綺麗な薄茶色の瞳の前、心の全てを曝される予感にぎゅっと上の端を両手で掴む。 「……ちゃんと俺に顔を見せろ 」 柔らかな声と布団から出た指に触れる口唇の感触。 ビク……と身体が自分の意に反して大きく震えた。 それは一瞬で離れていったが、口づけられた指先はまるで火傷したように熱い。 胸の高鳴りも治まるどころか、騒がしくなっていく。 こんなに煩くては、朔耶さんにも聞こえてしまうかもしれない。
/425ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11701人が本棚に入れています
本棚に追加