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そのままいとおしげに、朔耶が髪に顔を埋める。 「璃桜だけだ。何も分かっていなかった、好きだという気持ちだけでずっと側にいられると思っていたガキん頃から、俺には璃桜だけだったよ。 ……まさか、忘れられちまうなんて思ってなかったしな 」 「あ…… 」 今では記憶は戻ってきてはいるが、あんなに好きだった朔耶のことを璃桜は忘れてしまっていた。 それどころか、朔耶との思い出は従兄弟の樹とすり替えられていたのだ。 小さな頃の朧気な記憶。 『さっちゃんに、あいたい 』 『そんな子はいないわ 』 布団に寝かされて、熱にぐずる璃桜に叔母は冷たく言い放った。 『璃桜ちゃんは、樹と間違っているのよ。《さっちゃん》じゃなくて、《いっちゃん》でしょう? すぐに呼ぶわね 』 『違う、さっちゃん。 いっちゃんじゃ…… 』『だからっ! そんな子はいないのっ! 』 バン!と、畳を叩く音に体が竦む。 『……それは璃桜ちゃんの勘違いなのよ。 おばかさんね 』
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