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「……だからね、うちにおいでよ。 美花ちゃん 」
途方に暮れた気持ちの中、柔らかい声に自分の名前を呼ばれ、ハッ……として顔を上げる。
目に映ったのは、花が零れるような優しい笑顔。
キラキラと輝く黒髪は、光を集めて円い輪を作り、まるで昔絵本で見た天使様みたいだと美花は思った。
しかし、思った後に直ぐにその考えを打ち消す。
天使なんて、神様なんて居る訳がないと。
いたら、どうして私はこんなことになってるの?
まぁ、いい。
コイツが何を企んでいるのかなんて知らないけれど、男が女に望んでいるものなんて限られてる。
「分かった、アンタんとこに行くわ 」
そう言うと、美花は男に対して笑顔を作る。
住まないかと言っているということは、暫くは置いてくれる気だろう。
そうでなくても、今夜、寝る場所を探す手間が省けたと思えばいい。
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