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じゃらん、じゃらんっ。 錫杖の卒塔婆形部の輪が重く鳴り、もう一度同じ音がした。素槍の穂先が魑魅の顔面に突き刺さったまま、柄が大きく下方へと、しなっている。 「天目一箇神か?余計なことを」 娘は姿勢を低くせず、山鬼の頭上へと跳躍していた。身軽にも錫杖の柄部分に降り立つと、男を尊大に見下ろし冷たく言い放つ。祝言を挙げたばかりの新妻が醸し出す雰囲気なぞ、欠片も存在しなかった。振り向いたのは一瞬で、懐に両手を入れて独鈷の武器を取り出すと、もう一度跳躍する。男が素槍を引き抜いた拍子に、山鬼が苦悶の叫び声を上げた。ほとんど同時に、頭上から躍りかかった勢いと彼女自身の体重をかけた一閃で、猿面の首が、ごとりと落ちた。
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