第1章 土佐桐耶と愉快な少女たち

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 春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。  ………………  太陽が地上に顔を出してから数時間が経った。朝の訪れに鳥が鳴き、川面が朝日を反射している。人々も少しずつ、眠りから覚めて来ていた。  そんな彼らより少し早く起きた二人の少女は、広々とした剣道場で対峙していた。  面で顔は見えない。だが、互いに酷く緊張しているようであった。二人の表情は、おそらく真剣そのもの。その場に満ちた静寂、空気が、ビリビリと震えているようであった。 「……いくぞ」 「いつでもどうぞ」  その一つのやり取りを開始の合図として、戦いの火蓋は切って落とされた。
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