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スキンシップとはいえ、あの頭を撫でることでさえ拒絶した沙織が、あの朝をさかえにやたらと体に触れてくる事が増えた。
元々一目を気にしない性格だったこともあり、学校の廊下でさえ気にせず手を繋いでくる。
「愛よ、愛。愛がさおを変えたの。」
お花畑のように夢見る乙女のような台詞をはく明里。
「とはいえ、あれじゃ沙織に彼氏も出来ないんじゃ。」
「本人がいいなら、いいんじゃないか?」
放課後、沙織の用事を待つ3人での話し合いだった。
「めぐは恋人つくらないの?」
「恋人・・かぁ。」
トントンと机を指で叩き、外を見た。
「俺達、デートするか。恵、先かえるな。」
「は?!」
「ごめんねー、めぐ。」
突然の2人の退却にポツンと1人にされた。
いつもなら、2人だけで会うときは事前に教えてくれるのに。
「お2人は?」
それは沙織も不思議だったらしい。
「デートだって。沙織、私達もデートしようか。」
「いいですよ。」
「・・・・。」
「行かないんですか?」
あまりに軽い返しに思わず脱力。
「沙織がこんなに懐いてくれて、私は嬉しいよう。」
警戒心の欠片もない彼女に、何かをする気も失せた。
カバンをもち、いつものファーストフード店にでも行こうかと思ったが、映画館にしてみた。
学生割りで安かった。
「手、繋ぐ?」
イスに座り、手を差し出せば、沙織は迷うことなく手を握ってきた。
「沙織、明里や文哉の代わりになろうとしなくてもいいんだよ?」
「???」
「こういうの、するタイプじゃなかったよね?」
握った手を見せながら聞くと、あぁと沙織は納得したように頷いた。
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