それは唐突に訪れる

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「で?なんで淋しく1人でケーキ食べてるわけ。」 行きつけのバーの一角をかり、ぐしゃぐしゃになったケーキにフォークをさして食べていると、ママから連絡が入ったのか友人の智美が顔を出してきた。 「博人が帰ってきた、さっき。」 「え、まじ?よく帰って来れたね。」 「だから、2周年記念のケーキは無用になった。」 「は?なに?お姉ちゃん、より戻すの?」 そう、智美は元恋人、吹雪の妹。 私の長年の恋心も、博人のことも全て知っている。 「会った瞬間、博人の胸に飛び込んでいったよ。」 「信じられない。」 「こうなる事、予想してなかったわけではないけど、一ミリも違う事無く予想通りになるとはなぁ。」 ぱくぱくとケーキをひたすら口に運んだ。 2人用だからと小さめを買ったが、やはり1人で食べるには大きい。 「やめなって。甘い物、好きじゃないくせに。」 乱暴にフォークを持つ手を掴まれた。 「ワイン、飲む?」 「楓さん・・。」 「あー駄目だ、やっぱり智美は帰れ。こういう日に一緒にいていいことない。」 「このまま放っておけるはず、ないでしょ。」 とりあえずケーキを遠ざけられ、グラスを頼む智美。 やけ酒、この言葉がこれだけしっくり来る日はない。
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