それは唐突に訪れる

4/6
前へ
/94ページ
次へ
「吹雪は、本当に博人が好きなんだな。」 「駄目男に構っちゃうのよ。」 「私が女だから、じゃないよね?博人が好きだからだよね?」 「楓さん。」 「私が男だったらって、言わないよね?」 高校時代、告白した時には友達以上には見れないと断られた。 それでも好きな気持ちは消えず、友人としてそばに居続けた。 博人に傷付けられた彼女に、卑怯だと思いつつも寄り添い、そばにいて励まし続けた。 しかし、彼女が最終的に選んでくれたのだ。 私にすればいい。好きだ。付き合おう。 それは一切言わなかった。ぐっと心の中で押し殺し、彼女が友人として求めるなら、それに徹しようと努めた。 が、博人が去り1年が経った時、彼女は手をさしのべてきた。 恋人として、寄り添って欲しいと。 例えそれが淋しさを紛らわす為だとは言え、嬉しかった。 「嬉しかったんだよ、本当に。やっと好きな人が手に入ったって。」 それと同時に不安も付きまとった。いつか博人が現れ、この時間を彼女を奪われるのではないかと。 ぐだぐだに酔ってしまいたかったが、それも出来なかった。 智美もまた、私に片想いしている。弱いところにつけ込ませ、同じ思いをさせたくなかった。
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!

104人が本棚に入れています
本棚に追加