ありがとう

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バーやクラブなどが近くにあるこのコンビニは、夜のお勤めが多い。 何をどう飾ったらそんな頭になる?というほど盛られた髪型 安っぽいスーツに身を包む、背伸びしたホスト 明らかにおかまのお姉さん? 朝方の疲れ切った顔の皆さんを見送って、その日の仕事を終えるのが習慣になった。 「お姉さん、いつものお願い。」 この台詞もすっかり定番だった。 元々接客業のバイトをしていた為、人の顔を覚えるのは得意で、いつものと言われても対応できた。 口が悪かったり、言葉遣いが悪い人も多いが、基本無垢な子が多いのだろう。 そこまで嫌な人はいなかった。 最近特に気になるのは、この毎日足繁く私のいる時間帯に通いつめる女性。 「暇な時でいいので、連絡、ください。」 そう言い、小さな紙切れを渡された。 そこには電話番号と名前だった。 電話番号を登録すると、そこからSNSが自動的に反映され、これならいいかと連絡を取り合うようになった。 彼女の名前は小雪。年は24才らしい。 好意的 まさに、その一言に尽きる彼女の行動に、戸惑った。 人から尽くされる行為になれてないのだ。 決して派手な格好ではなく、清楚な彼女。 人気が高いのも、雰囲気でわかった。 「これ、良かったら貰ってください。」 それは、バレンタインだった。 手作りチョコレート。 「ありがとう・・ございます。」 これは、本命だろうか。と、一瞬思ったのが伝わったのか、彼女は少し頬を赤らめ 「本命、ですよ?」 と、言い、恥ずかしそうに微笑みながら出勤した。 錆び付いた心がぎこちなく動き出した。
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