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1週間後
カフェで待ち合わせた。
今日で終わりかと思うと、いたたまれない気持ちになる。
時間通りに小雪が店の扉を開けた。私を見て、微笑む彼女に胸が痛む。
「ごめんなさい、待たせちゃった?」
「いや、先に珈琲飲もうと思って早めに来たんだ。」
「そうなの?じゃ、私も同じのを。」
いつものデートのようだった。
彼女の仕草、香り、笑顔。
「小雪、もし必要があれば弁護士をたてるから。」
「え?」
「これで逃げて。もう警察も動いてるから。」
「・・・・。」
全てを察したのか、小雪は微かに震えていた。
「最初から・・知ってたの?」
「いや・・・付き合いだして、少ししてからかな。弁護士が訪ねてきた。君が詐欺師だから逮捕に協力してくれって。」
「騙してたの?」
「うん。でもまだお金を要求された事、ここで会うことは教えてない。ただ、君が起訴されるのは確実で、時間の問題なんだ。これで少しでも逃げて欲しい。私は被害届をださないから。」
これがせめてもの思いだった。
「君の連れも、知られてるよ。こんな事をさせる男とは、早く縁を切った方がいい。」
2人の共謀だと言うことも知っていた。私に抱かれた後、前、そいつに抱かれていた事も。
それでも好きだった。
「さようなら、百華。」
偽名だったのも、知っていたよ。
最後にそっと手を握り、封筒を渡した。
夢を見させてくれた代償だと思えば、後悔はなかった。
これまでの恋愛で、ここまで尽くしてくれた人も、こんなに愛した人も彼女が初めてだったから。
君の愛が全て虚像だったのか。その真意はあえて聞かなかった。そこまで受け入れる覚悟は、なかった。
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