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あれからキスマークが全身から完全に消えるまで、2週間ほどかかった。
容赦なく付けられたそれは、首の後ろまであり、ファンデーションで誤魔化しきれずかなり周りから冷やかされた。
「これでやっと、呪縛から解放されるかな。」
忘れたくても中々あの夜の事は忘れられなかった。
彼女はノンケだったようだが、あれは完全に誘い受けのネコ体質。しかもご奉仕型のタチ側にしてみれば、いや、自分にしたら理想のタイプだった。
「顔も好みだったなぁ。」
もう逢えないだろうか。と、未練たらしくいつものバーへ向かっていると、正面からスーツ姿の男と腕を組んで歩く彼女を見かけた。
相手もこちらに気付き、一瞬顔を強張らせた。
目をそらし、他人のふりをすれば、何事もなくすれ違うだけで終わった。
「なに、期待してんだか、私は。」
きっとさっきの相手は彼氏だろう。
彼女にしてみれば、あの夜は汚点の何物でも無くて、さっさと消し去りたい過去に違いない。
二股され、傷付いた心が弱って、有り得ない事にまで妄想を働かせてしまったのだ。
そう自分を納得させていたら、
「ねぇ!ねぇってば!!」
突然肩を掴まれ、呼び止められた。
「何度も呼んでたのに。無視するの?」
彼女だった。
「え?ごめん、ぼーとしてて。何か、用??」
まさか話しかけて来るとは思わず、いつもの口調で話していた。
「彼氏放ってきたんだから、責任とって!」
「は??」
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