アルコールの力

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梨華はキスマークの消えた相手の体中をそっと撫でた。 細い腕ながらキチンと腕枕をしてくれる辺り、相手も経験はある程度あるのだろうと察する。 「私が、キスマークをあんなにね。」 お酒を飲みすぎて行きずりの相手と、は何度かあった。 彼氏もいたりいなかったり。 でも常に受け身で何かをこちらから何かしたいと思った事は無い。 まさか、同性とセックスするなんて思いもよらなかったし、病気かと思うほどキスマークをつけたなんて信じがたかった。 が、しらふでもう一度抱かれて確信した。 確かにこの体に触れたい。自分だけの跡を残したいと。 1番目立つ首元に3カ所ほどつけていると、まだ眠たいのかうっすら目を開けた彼女は、よしよしと頭を撫でた。 「褒めたのは、そっちだからね?」 前よりも多くつけよう。今度は消えてしまわないように。 「なに、これ。いつの間に。」 鏡の前で放心状態の彼女。 「いっぱいつけてって言ったから。」 「嘘だ!」 「ねぇ、名前は?私は梨華。」 「私は夏樹・・。て、え?ほんとに私そんな事言った?」 「うん。」 嘘だけど。 心の中で舌をだし、どう隠そうか翻弄する夏樹の首に巻き付いた。 「いいじゃない、浮気防止だと思えば。」 「浮気防止??」 「そっ。私以外が触らないように。」 「そんな関係だっけ?!」 「今日からね。」 チュッと頬にキスすれば、満更でもないような顔に自信がついた。 「キスマーク、消えない内にまた逢わなきゃ、顔につけるから。ほっぺがいい?おでこ?」 「会社いけなくなるから、本気でやめて。」 文句を言いながらも腕をほどくことはせず、腰に手を回す彼女が愛しく思えた。 「外でお酒のむとき、気を付けてよ?あんなの頻繁にされたら付き合いきれないからね?」 「夏樹とだけの時にしか、もう飲まないわ。夏樹もね。」 「ずいぶん、惚れ込んだみたいだね、私に。」 「そうね。その責任とってね。」 「はいはい。取らせていただきます。」 その笑顔が、さらに好きになった。
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