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「バイトは社会勉強?」
はい、と頷いたルシアンは、逡巡している様子を見せたが、言葉を選びながら話し出した。
「……ずっと、その人の言う通りの生活で。とても、いい人なんですよ。でも、……少し自分で考えたいなぁと」
「男だものな。将来の事、真剣に考えたくなる時期だ」
何、先輩風を吹かした台詞言ってやがる。
内心、自分の虚勢の張り方が情けない気がした東吾だが、そんな鎧でも無いよりマシだ、初めてルシアンの方に顔を向ける事ができた。
胸がドキリとしたのは、ルシアンの碧眼の焦点がまっすぐに東吾を捕まえたからだ。
コンビニの灯りだけが光源なのに、暗い車内でこの翡翠の瞳はこうも輝くのかと東吾は感心した。まるっきり、その瞳の虜になってる事には無自覚なまま。
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