チートとチート

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あなたは飛べますか――そう尋ねようとタケルが思ったとき、男性がフッと鼻で笑った。 「どうやら聞いていた通りの能力だったな。大丈夫。“上からの”攻撃も含めて察知できている」 男性はクルリと後ろを向いた。タケルから見えるその背中は、感動するほど頼もしい歴戦の勇者の背中だった。 「撃ってみろよ、ほら」 男性が挑発した。次の瞬間、タケルが見たものと全く同じ光景が繰り返された。 ミサイル、光線、光弾。様々な色と様々な種類の攻撃が、タケルたち2人目がけて飛んでくる。当たれば死ぬだろう、確実に。でも男性はそれらを見ても、全く動じなかった。 「……え?」 困惑するタケルの目の前で、全ての攻撃が止まっていた。タケルの能力ではない。タケルは“今回は”能力を使った覚えはない。 「え……お兄さんが止めているんですか?」 「そうだな。上のやつもな」 男性の言葉に誘導されて上を見ると、なんと燃え盛る隕石のようなものが空に浮いていた。今にも落ちそうなそれは、ミサイルなどが止められたのと全く同じように、空中に静止している。 「返すぞ」 男性がマントから手を出して、人差し指をピッと振った。すると全ての攻撃は発射された方向に戻った。 タケルが能力で“時間ごと”戻したのとは違い、戻された攻撃は全て発射地点にいる者たち――恐らく暗殺者たち――を吹き飛ばした。爆炎と共に絶叫が鳴り響き、瓦礫が吹き飛ぶのが分かった。
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