チートとチート

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自嘲気味に笑う彼の顔は、自分の欠点をやんちゃな息子のように受け入れているようにも見えた。恐らく長い間、こうして葛藤してきたのだろうなと、タケルは感じた。 「ルクスに乗りたいのなら、少し君の記憶を見せてもらいたい。いいかな」 「えっ」 記憶を見せてもらいたいだなんて、そんな要求をされることは全く想像していなかった。そんな能力を持っていることが凄く珍しいことはタケルにも分かったし、それ以上に怖かった。 それに、先ほども男性は、タケルにいくつか質問をしたいと言っただけなのだ。なぜいきなり審査が厳しくなったのだろうと考えると、やはり先ほど自分の名前を言ったことに思い当たった。 「いいですよ。リーディックの能力を使って、記憶を見るんすよね」 少し間があったが、タケルは結局男性の要求を受け入れた。ここで拒否してしまって、せっかく手に入れたチャンスを無駄にしてしまうのは避けたかった。 「ありがとう。では、ちょっと失礼するよ」 男性が人差し指でタケルの額に触れた。敵意はまるで無かったが、タケルは何をされるのか分からないという恐怖を押し隠そうと、平然とした表情を作った。 恐怖を和らげるために深呼吸する。だが男性は、タケルが息を吸い込んだ瞬間には指を放していた。 「終わりだ。悪かったな」 「え、もう?」
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