~第十一章 魔界~

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タクルは手近な場所に降り立った。 そこは偶然にも、魔族の間で『還らずの森』と呼ばれる場所だった。 この森に一歩踏み入れると二度と戻ることがないと言われている。 挙句の果てには魔族を好んで食す太古から存在する巨大な植物が迷い人を喰らってしまうという。 魔族が避けている森だ。 それは力の強いタクルには特に問題なかった。 「ちょうどいい。ここなら他の魔族に見つかる心配はない。」 タクルは何かあった時のためにとデュースからもらっていた傷薬と包帯でカレジに応急処置をして、流れていた川の水を飲ませてやった。 するとその時、遠くから「わーっ」という大勢の人々の声と、馬の嘶きが聞こえてきた。 魔王軍と反乱軍の戦いが始まった瞬間だった。 「とうとう始まった…。あんたがいてくれたら心強かったんだが…。このケガでは仕方ない。ここで休んでくれ。生きてたら戻ってくる。…オブス。今、助けに行くぞ!!」 タクルは翼を広げると、全速力で魔王城目掛けて飛んで行った。 魔界の歴史が大きく動き出そうとしていた―。
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