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カレジはケガと疲労と、魔界の独特の空気にやられて何日も何日も起きられずにいた。
タクルに救われたのは、なんとなく分かった。
しかし、タクルが飛び去った後も、誰かが水を飲ませてくれていたのを夢うつつに感じていた。
やっと動けるようになった時。
目の前に、ひとりの魔族が佇んでいた。
その姿はなんだかぼんやりしていて、淡い緑色に輝く体は透けて向こう側の景色がうっすらと見えた。
「水をくれていたのは、あなたですか?…あなたは、亡くなっているのですか…?」
魔族の男は寂しそうにうなずいた。
「この姿ではヒトに触れることはできませんが、自然には触れることができるので、なんとかあなたに水を。私はティンと申します。800年ほど前まで魔王様にお仕えしていました。」
「は、800年!?ずっと、ここにいるんですか!?」
「…はい…。」
「…どうして?」
「救いたい方がいるのです。…魔王様のご子息、イベル様です。イベル様は、『魔の花』に飲み込まれてしまったのです。幼かったイベル様は幸いにも噛みつかれず、丸呑みされました。つまり、無傷のままなのです。魔の花は魔族を食べます。しかし、魔族だけです。イベル様は、魔族と人間の間に生まれた子。純粋な魔族でないイベル様を消化することはできないのです。私は油断していたために、ここで命を落としました。しかし、イベル様は生きています!魔の花の中で!ずっと、救ってくれる方を待っていたのです…!まさか、人間がやってくるとは思いもよりませんでしたが…。」
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