8.

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璃桜のあまく零れる声に限界を感じ取った朔耶は、掠めるように口唇に触れると璃桜を先へと促す。 サラサラと揺れる薄い茶色の髪とハラハラと散る透明な水滴が、朔耶の律動とともに璃桜に振り掛かった。 「イけよ、俺も直ぐだ…。」 薄く開いた瞳に、気付いた朔耶が淡く微笑み、璃桜は見惚れて息を飲む。 胸を締め付けられる痛みに、璃桜は思う。 誰にそしられようが、裏切者と言われようが、もう構わない…。 欲しいものは一つだけ…、それが叶うなら何んでもする…。 それは、両親が亡くなってから全てを諦めて、何も欲しいと思わなかった璃桜の初めて願ったものだった。
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