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アイ…ツ…?
璃桜の胸が、大きくドクン…と鳴った。
「〈アイツ〉って誰? 」
しまった…というような顔をした壱葉に、璃桜は確信する。
壱葉は自分の兄のことを、決して〈アイツ〉なんて呼ばないから。
「樹のことじゃないよね? 〈アイツ〉って誰なの? 」
「……言えない 」
俯く壱葉に、璃桜は尚も縋る。
何か…、何か私が大事なことを忘れているんだとしたら……。
「お願い、壱葉。〈アイツ〉って、私の大切な人なんでしょう? 壱葉は知っているんでしょう?」
けれども、壱葉はそんな璃桜を悲しそうに見ると視線を背けた。
「璃桜がこれ以上傷付くって分かってて、俺には言えない…… 」
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