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「それじゃあ、先ず一番大切なことを聞こうかな… 」
医師は椅子をグルリと璃桜の正面に向けると、真っ直ぐに瞳を覗きこんだ。
「君は、産むんだよね? 」
真剣な表情。
先程の柔らかい笑顔は嘘のようで、璃桜はゴク…っと息を飲む。
診察の時に見せてもらった超音波映像、動く心臓と既に見えた丸い手足。
自分の身体に宿る命、朔耶さんと私の……。
「はい…… 」
璃桜は医師の瞳を見返すと、躊躇わずに答える。
愛してあげる。
あなたのお父さまが愛してくれなくても、私が二人分愛するから、許してね……。
「……うん、良かった。おめでとうございます 」
医師は安心したように、表情を戻すとニッコリ笑った。
「先生…? 」
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