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煌めく黒い瞳と品のある優しい物腰、どこかで……?
ふと医師の胸元を見ると、《橘》と書いてあるネームプレート。
橘……?
ハッ…となり、振り向くと橘が肩を竦める。
「……うん、そのヤブ医者、俺の兄貴 」
「お兄さま…? 」
医師は眉を顰めると、橘に持っていたボールペンを投げつけた。
橘は飛んできたそれを、自分の前でパシッと掴む。
「浩輔、お前の頼みだから時間外でも診てやってんのに、ヤブ医者はないんじゃないか? 」
「よく言う…、本当はずっと見たかったから引き受けてくれたことなんて分かってるよ 」
それを聞いた医師は、我慢しきれないと言うように、しかめていた顔を緩めて、くくっ…と笑った。
「そりゃそうさ、この子が噂の《七瀬のお姫様》だろう? お前ら、ずっと隠してんだもんよ。 ……それで、もう朔耶は呼んだのか? 」
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