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そう思った時だった。
誰かの手によって、璃桜より先にバッグが取られてしまう。
視線で追うと、振り向いた先、バッグを手にした医師がニコッと柔らかい笑顔で璃桜のことを見た。
「先生…! 」
「話はした方がいいと思いますよ? 君の為にも、お腹の赤ちゃんの為にも 」
そんなことは、分かっている。
頭にカッ…と血がのぼるのを感じた。
「……返して…下さい 」
「君が逃げないって、言うならね? 」
どうしてそんなことを言うのだろう。
それは、そんなにいけないことなのだろうか?
何も…、何も知らないくせに……。
「……なぜ、逃げたらいけないんですか? 」
口をついた言葉に、一番驚いたのは璃桜だった。
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