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けれど、我慢していた想いは溢れて止まらない。
「誰も、先生達みたいに強い人ばかりじゃないです。……分からないかもしれないけれど、自分を守る為に逃げなきゃいられない人間だっているんです 」
バッグはもういらない…、出口に向けて歩き出し、橘の横をすり抜けようとすると案の定、手を取られて引き止められる。
「……離して下さい。 」
「璃桜ちゃん… 」
今までは見せなかった璃桜の強い瞳に、橘は瞠目する。
「私は…、橘さんのことを信じていました 」
「……どうして過去形なの? 俺が朔耶に連絡したから? 」
苦笑する橘の瞳を、璃桜は真っ直ぐに見据えた。
「分からないのならいいです。……橘さんに自分の気持ちを打ち明けたのは間違いだったって思うだけですから 」
「どういう…意味? 」
橘が笑みを消して眉を顰めるのとは反対に、璃桜はくしゃ…っと顔を歪めながら、うっすらと儚げに微笑む。
「……私は確かに汚れて穢らわしい人間かも知れない。 でも、そんな簡単に、色んな人を好きになんかなりません 」
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