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「確かに十数年も前のことだ、今更直接証拠なんか残っていない 」
「やっぱり、そうじゃねぇか! 証拠も無いくせに人を…… 」
「……無いけれど、調べれば調べる程、動機にしても間接事実にしても君の両親には有り過ぎる 」
「間接事実っ…て…… 」
橘は血の気を無くして白くなった壱葉の顔を痛々しそうに見たけれど、そのまま話を続ける。
「じゃあ壱葉、 聞くけど、その時遺族だった君の両親が警察に非協力的だった訳は?
出掛ける寸前に運転手に用事が出来て、朔耶の父親が運転せざるを得なくなったのは?
……失礼ですが、その運転手と奥様が当時いい仲であったのは周知の事実だったらしいですね 」
「……私は知らん。 壱葉も璃桜も、そいつらの戯言など聞くんじゃない 」
突然、矛先を向けられて瞠目するが、少し時間が与えられたからか、叔父は落ち着きを取り戻して厳しい口調で答える。
しかし、その表情はどこか強張っていて、それが殊更壱葉を動揺させていることが見て取れた。
ただ璃桜が不思議だったのは、壱葉とは違い、自分がこんな衝撃的な話を冷静に聞いているということ。
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