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「身体も弱く染め付けしか知らないヒトでしたからね、身寄りも無く一人俺を抱えて、生活に困り果てた母はあの日アンタんとこに嘆願に行ったんでしょう? しかも、アンタはそうなることを見越していた…… 」 『ごめんね、朔耶…。 お母さん、とんでもないこと…してしまった。 もう、お父さんに顔向け出来ない…… 』 そう言って帰ってくるなり、薄暗く狭い部屋の真ん中で、まだ子供だった自分を抱き締めて泣いた母。 あの時は分からなかった乱れた髪と服の意味も、今ならば分かる。 ……その三日後、塞ぎ込んでいる母を元気付けようと、百点のテストを手に学校から走って帰って来た朔耶の目に飛び込んできたのは、窓際でカーテンとともに揺れる母の姿だった。 「証拠なんか無くとも俺が全部を知っている、俺が証拠だ。何も無かったように、被害者面して勝手に死んでいくのは許さない 」 淡々として聞こえる声には、底冷えするような冷たさと燃えるような熱さが入り混じっている。
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