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「人の気持ちなんて簡単じゃないことくらい、自分達が一番良く分かっていただろうに 」
七瀬 麗子の目論みが外れたのは、何よりも血に重きを置き、璃桜の両親の結婚にも反対していた姑の死。
それは早くに父を亡くし、当主となっていた璃桜の父親が名実ともに全権を担うということを意味した。
そして懸念は実際のこととなる。
古い慣習を破り、血よりも実力を重んじ、まだ幼い娘の気持ちをも尊重しようとする当主の考えに、自分の息子の入り込む場所など、どこにも無かった。
サラリと撫でられる髪、気遣うような優しい眼差し。
この人は、ここまで来ても、私を傷付けまいとしている。
事件の根本となった私の想いを、忘れているならそれでいいと話さないでいてくれている。
見つめてくる瞳の奥、どこまでも知りたいと思うのに、その色は深過ぎて璃桜には底まで見ることが出来ない。
「……七瀬 樹を、愛せなかったか? 」
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