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聞いたことあるだけで、実際に話したことや和泉の幼なじみとして見たことはなかった裕二は奏多をじろじろと見た。
奏多は居心地悪そうに笑って、裕二に声をかける。
「あの、加治和泉、もう帰りました?」
「入学式の準備行ったわ。そろそろ戻ってくんじゃね?」
「入学式の準備……あ、仁科さん行ったやつだ」
最後のぽつりと呟かれた言葉に、やっぱりあいつも行ったのかと裕二は溜め息を吐いた。
待っていたやつとは彼女である仁科優香であるのだが、どうやらそいつは目の前にいるこいつと同じクラスらしい。
“チェック”されてる上に同じクラスとは、確実に妄想の餌食になっているのだろう。
何のって、ボーイズラブ。チェックは、攻めだの受けだのを勝手に設定して萌えの対象にしているってこと。
彼女は所謂“腐女子”というやつで、よく裕二も巻き込まれていた。
「浮気をするなら男とね!」と笑顔で言われたことを思い出す。
「俺、その仁科優香を待ってんだよね。良かったら馬鹿共来るまで話さねぇ?」
「本当ですか? 中々待ってても来なくて暇だったから嬉しいです」
「同い年だし敬語いらねって。俺は品川裕二」
「うん。俺、尾形奏多。よろしく」
にっこりと男にしては可愛い笑顔を浮かべる奏多を見る裕二。
あぁ、こいつは確かに「攻め」ではねぇな。優香の妄想通り。
そう思いつつ自分も染まっているような感じがして苦笑する裕二。
しばらく裕二は奏多と会話を続けた。
奏多の言葉は時々ふわふわとしていて、どこかずれていた。
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