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森の中を逃げていた。
城壁が吹き飛ぶのが見えてから、まだそれほど経っていないと思った。
何か恐ろしいものが来たから、彼女の手をつかんで逃げた。そう、彼女は自分の妹だ。そうだ。
はるか後ろで、街が破壊されていくのを感じていた。それでも、今は振り返る訳にはいかない。
ただ、右手につかんだ小さな手首を離さずに、急いで足を進める。
ときおり、前方を逃げている人々の影法師が、すっと長く伸びる。
はるか後ろで何かが光り、その光が彼らの背中を照らすからだ。そして、その光とは、破壊の光だった。
逃げるしかない。それを自分は知っていた。
自分も少しは、戦う力はあるだろう。でもあれは、あいつは、自分程度の力では話にならない。
強く、恐ろしい。
だからこそ、今、必死になって逃げていた。ついに自分たちの街にもやってきたのだ。あいつが。
共に逃げる人々。老若男女あらゆる人が、破壊の光に背を向けて歩いていく。
先頭の者が、ふと立ち止まった。どうやら、森の出口に出たらしい。
その先は平原だ。身を隠す場所がない。しかし逃げねば。
逃げねば、死ぬ。
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