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「その為に・・・ほれ!」
「ゴム風船?!」
「おおよ!お前さんがこの霧のスクリーンにダイブした瞬間、『あっちの世界』で息を入れて大きく破裂する寸前まで膨らませろー!」
「ええーーーっ!自分、嘴で風船を割るの好きだけど、自ら嘴で風船を膨らませるの物凄く怖くて苦手なんだけど・・・」
「だぁめ!君の吐息が今までの君の『データベース』になって、その風船の吹き口をあのビーグル犬の口に加えさせてその『データベース』を、書き換えることにより、君は晴れてカラスから犬になれる!」
「は、はい!」
・・・駄目だ・・・
・・・自分、肺活量物凄く少ない・・・
霧のスクリーンには、既に事切れた実験台のビーグル犬がゴム手袋をした研究員によってビニール袋に入れられ持ち運ばれる寸前の模様が写し出されていた。
「よしいけーーー!!」
どん!
ドードーの強烈なタックルによって、萎んだ風船をくわえたカラスのキィオは霧のスクリーンの中に飛び込んでしまった。
「いてて・・・は?」
ここは、暗闇の中。
キィオは直ぐに解った。
ここは焼却炉の中。
隙間からの光がキィオの嘴のゴム風船を写し出された。
「うえっぷ!困ったな・・・息を吸い込んだら鼻の孔を灰を吸い込んじゃう!げほっげほっ!」
キィオは、鼻毛で覆われた鼻の孔を掻き掻きゆっくりと灰を吸い込まないように深呼吸して、風船をそっと膨らませた。
ぷぅーーーーーーっ!
ぷぅーーーーーーっ!
ぷぅーーーーーーっ!
ぷぅーーーーーーっ!
キィオは今までの万感の思いを吐息に託して、嘴にくわえた風船にゆっくりと、
ぷぅーーーー・・・
どばーーーん!
焼却炉に、白いビニール袋が投げ込まれた。
「これは・・・」
キィオが、風船を嘴にくわえたまま脚の鉤爪で引っ掻いてそのビニール袋をこじ開けると、あの動物実験で死んだビーグル犬の骸の入っていた。
ぼおっ!
「しまった!」
焼却炉に火が放たれた。
「熱い!熱い!熱い!熱い!口!口!口!口!」
カラスのキィオは、脚の鉤爪でビーグル犬の骸をまさぐって犬の口を探した。
「やば!風船に火が炙られたらパンクして、ドードーさんの計画が台無しになるどころか、自分も焼鳥になっちまう!」
キィオははっ!と気付いた。
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