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「はっ!はっ!はっ!はっ!」
『ビーグル犬』の身体を授かったキィオは、舌を垂らしてドードーを見て微笑んだ。
「やったなー!カラス・・・でなくて、わんこ!」
「うん!ドードーさん!自分この犬、耳が垂れ下がっててこれがとっても気に入ってるんだ!ふふん。」
キィオは、顔をブンブン振り回して垂れ下がった耳を揺らしておどけた。
「わんこ!『魔法』には等価の犠牲が必要って知ってるかい?」
「『犠牲』?」
「そうさ。君は翼を失ったのでもう飛べない。あ、その気になったらわしの吐息入りのゴム風船を身体に付けて・・・
それもあるが、まだ犠牲にしたものがある。」
「それは?」
「それは・・・君、わんこが『わんこ』として生きていくと解る筈だ。
あ、これもいい加えておくわ。」
「なあに?ドードーさん。」
「まさか、こんなことは無いと思うのじゃが、『死にたい』とか『カラスに戻りたい』と思うと、君は魔法が溶けて元のカラスに戻るから気を付けんのじゃ!
その時は、既に君の『カラス』の身体は焼却されたから、実態の無い身体になるからな。それだけは覚えとけ。」
「はーい!ワカリマシタわん!」
・・・はっ・・・
・・・そうなんだ・・・
・・・自分、犬だから「わん」なんだ・・・
・・・だから、もう「かー」じゃないんだ・・・
「ぷうーっ!」
ビーグル犬のキィオは思わず頬をはらませて、吹き出してしまった。
「わっはっはっはわん!」
キィオは寝っ転がり、ジャンプして、はしゃぎ回った。
「わーい!わんこわんこ!自分は犬になったんだーーーーー!!」
「な、なんなのいったい!」
「ドードーさん!ドードーさん!遊ぼうよ!一緒に!自分、はしゃぎたくてはしゃぎたくてたまらないんだ!」
「わんこ、せっかくだけど、向こうの島の困ってる生き物に『魔法』をあげる用事があるんだ。じゃあ、またね!バーハハーイ!」
ドードーはそう言うと、脚を高速回転してロードランナーの如く猛スピードで遥か向こうへと去っていった。
ぴゅーーーーーーーーーーー!!
ビーグル犬のキィオは、走り去るドードーを視界から消えるまで前肢を揚げて振っていた。
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