7#ビーグル犬のキィオ

2/2
前へ
/22ページ
次へ
 「はっ!はっ!はっ!はっ!」  『ビーグル犬』の身体を授かったキィオは、舌を垂らしてドードーを見て微笑んだ。  「やったなー!カラス・・・でなくて、わんこ!」  「うん!ドードーさん!自分この犬、耳が垂れ下がっててこれがとっても気に入ってるんだ!ふふん。」  キィオは、顔をブンブン振り回して垂れ下がった耳を揺らしておどけた。  「わんこ!『魔法』には等価の犠牲が必要って知ってるかい?」  「『犠牲』?」  「そうさ。君は翼を失ったのでもう飛べない。あ、その気になったらわしの吐息入りのゴム風船を身体に付けて・・・  それもあるが、まだ犠牲にしたものがある。」  「それは?」  「それは・・・君、わんこが『わんこ』として生きていくと解る筈だ。  あ、これもいい加えておくわ。」  「なあに?ドードーさん。」    「まさか、こんなことは無いと思うのじゃが、『死にたい』とか『カラスに戻りたい』と思うと、君は魔法が溶けて元のカラスに戻るから気を付けんのじゃ!  その時は、既に君の『カラス』の身体は焼却されたから、実態の無い身体になるからな。それだけは覚えとけ。」  「はーい!ワカリマシタわん!」    ・・・はっ・・・  ・・・そうなんだ・・・  ・・・自分、犬だから「わん」なんだ・・・  ・・・だから、もう「かー」じゃないんだ・・・  「ぷうーっ!」  ビーグル犬のキィオは思わず頬をはらませて、吹き出してしまった。  「わっはっはっはわん!」  キィオは寝っ転がり、ジャンプして、はしゃぎ回った。  「わーい!わんこわんこ!自分は犬になったんだーーーーー!!」  「な、なんなのいったい!」  「ドードーさん!ドードーさん!遊ぼうよ!一緒に!自分、はしゃぎたくてはしゃぎたくてたまらないんだ!」  「わんこ、せっかくだけど、向こうの島の困ってる生き物に『魔法』をあげる用事があるんだ。じゃあ、またね!バーハハーイ!」  ドードーはそう言うと、脚を高速回転してロードランナーの如く猛スピードで遥か向こうへと去っていった。  ぴゅーーーーーーーーーーー!!  ビーグル犬のキィオは、走り去るドードーを視界から消えるまで前肢を揚げて振っていた。  
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加