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ビーグル犬のキィオは空を見上げた。
・・・懐かしい・・・
・・・もう一度、あの空を自由に飛びたい・・・
・・・でも、もうそれも出来ない・・・
・・・『魔法』には、等価の犠牲が必要とあの不思議なドードーさんが言う通り、自由は犬として生きる道を見出だす代わりにこの『空』を失った・・・
・・・でもいいんだ・・・
・・・この大地を踏みしめて、様々な臭いを嗅いで、何処までも駈けていくのがこんなに楽しくて、とってもワクワクするなんて・・・
・・・あのドードーさんみたいに、風船付けて空を飛ぶってことはそうは無いが、想像で空を飛ぶことが出きる・・・
・・・ドードーさん、ありがとう・・・
ビーグル犬のキィオは走った。夕闇迫る土手の上を。
人間の側を潜り抜け、
今まで『仲間』だった、カラス達をここぞとばかりに脅かして、
同じ『犬』の通りすがりの野良犬達と会釈と、或いは立ち話をして、
キィオは走る。
何処までも走る。
新たなる自由に向かって。
新たなる試練に向かって。
やがて月日は廻り・・・
キィオは自分がかつて『カラス』だったことを忘れた。
これがドードーの言っていた、『魔法』の等価の犠牲だったことは無論、キィオには解らなかった。
何故なら、
キィオは完全に心も体も『犬』になってしまったからだ。
わおーーーーーーーん!!!!
『犬』のキィオは遠吠えする。
キィオに今まで感じたことの無い、生きる喜びが心身から満ち溢ていた。
~fin~
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