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キィオは泣いた。
今はすっかり伐採された産まれ故郷の山林のある方向を向いて、涙を流して泣いた。
キィオには、もう『カラス』として生きていくのは限界に達した。
・・・何で自分は『カラス』として生きていくのだろうか・・・
・・・他の鳥や獣に何でなれないんだ・・・?
ばさっ!
ばさばさばさばさばさばさばさばさ!!
悲しみに暮れたカラスのキィオは、翼を拡げて雲行きの怪しい大空に向かって飛んだ。
ばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさ
・・・全ての友も恩師も、自分の馬鹿さ加減に呆れて愛想尽かされた・・・
・・・自分は、もうどこか遠くに行って消えてしまいたい・・・
・・・消えた去りたい・・・!
・・・消えたい去りたい・・・!!
びかっ!
ごろごろごろごろごろごろごろごろ!!
ざあああああーーーーー!!
びゅおおおおおーーー!!
黒く立ち込めた暗雲から稲光が走り、激しい豪雨と突風が傷心のカラスのキィオを打ちのめした。
びかっ!
ごろごろごろごろごろごろごろごろ!!
ざあああああーーーーー!!
びゅおおおおおーーー!!
「うっ!」
キィオは暴風に煽られ、翼のバランスを失った。
びゅうううううう!!
ごおおおおおおおおおおおお!!
「うわあぅ!」
キィオの体は遂にきりもみして、暴風に吹き飛ばされた。
びゅううううううううううう!!
ごおおおおおおおおおおおお!!
・・・まあいいや・・・
・・・自分はどうせ、このまま死ぬんだ・・・
・・・このまま吹き飛ばされていよう・・・
・・・もう自分は『カラス』でいるのは疲れたよ・・・
・・・もう、どうにでもなっちゃいたい・・・!!
びゅううううううううううう!!
ごおおおおおおおおおおおお!!
ざああああああああああーー!!
羽ばたかずただなすべきままのカラスのキィオの羽根や羽毛は、どんどん抜け落ち、暴風雨に吹き飛ばされて舞った。
「あはははっ!あはははっ!」
びゅうううううう・・・
ごおおおおおおおおおおおお・・・
吹き飛ばされていくキィオの姿はやがて、山を越えて街を超えて、川を超えて何処までも何処までも舞って、やがて豪雨の彼方に消えていった。
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