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「そう来ることは計算済みだぜっ!」
丁度鈴凛が頭上を通過したあたりで、泰史が鈴凛の動きに対応するように腕をタイミングよく伸ばした。
「……にひひ」
泰史が鈴凛を見つめて不適に笑う。
「……ちっ、タッチされてしまったカ……」
鈴凛が舌打ちしながら、タッチされたことを悔しそうに呟いた。そう、鈴凛が前宙返りで泰史を飛び越えた時、タイミングよく鈴凛の腕にタッチしていたのだ。
泰史……勘の鋭さと動体視力が半端じゃねーな。普通なら目の前であんな無茶苦茶な動きされたら、すぐ対応できねーよ。
「逃ーげろー!」
立ち尽くす鈴凛を尻目に、泰史が全速力でその場から離れる。こうして鈴凛が鬼になったわけだが……決して油断が出来ない状況が続く。速度ではやや泰史に劣るものの、変則的な動きをするぶん鈴凛の方が厄介かもしれねーからな。
鈴凛は俺たちを見渡している。獲物を決めているのだろう……。そして一人を視線に捉えてニィっと笑った。鈴凛の標的は……。
「……ほぉ、俺か」
辰之助だ。でもなんで伊東を狙わないんだ? 伊東を負かせば雪見だいふくを奢ってもらえるって言ってたのに。
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