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「あの時は世話になったな。他の奴らはいないのか?」
「あぁ、今は俺たちだけだ」
一応、念のためサヤを俺の背後に隠すように移動させる。
「そっか。なら他の奴らに伝えておいてほしいことが二つあるんだ」
「?」
「俺の無罪が晴らせた……。事件があった時間帯に、とあるレンタルショップの監視カメラに俺の姿が映っていて、そこにいた何人かも俺が居たことを証明してくれたんだ……」
伊東が目を細めて言った。そうか……そうかそうか。よかったじゃねーか。理由もやり方もちょっとアレだったけど、ちゃんとあの時無罪を主張するよう諭してよかったぜ……。
「それで、晴れて自由の身となったわけだが……世間に対する俺の評価は最悪だろうな……全国に俺の顔が知られちまってるだろうし」
……濡れ衣とはいえ凶悪殺人犯で脱獄犯って報道されちまったからな……。誤認逮捕というやつか。逮捕する側ももっとちゃんと捜査するべきである。何もしていない人の時間を長きにわたり無駄にしたあげくに、世間のイメージを最悪にしちまったんだぞ。一人の人間の人生をぶち壊したと言っても、決して大袈裟な言葉ではないよな。
「そこで俺は、どこか遠いところに行くことにしたんだ。今日の夜……遅くても明日の午前中のうちにな。その地でまた一からやってくことにしたよ」
伊東は半ば飽きれ気味で言った。伊東によると、世間からは白い目で見られるが、家族からはちゃんと信じてもらえたのが唯一の救いとのこと。
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