少女の

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空が濁っている。 そこから落ちてくる雪は白いが、地上に落ちると人や何かに踏まれて灰色に染まった。 地上には雪が常に一定量はあるため気温が低く、人は俯きがちに歩き、建物に籠る時間は長い。 年中この状態なので外では植物が育ちにくく、動物は生きにくい。 動物も作物も建物の中で育てるのが普通だ。 雪をずっと掘っていくと茶色の土が見えるが、油断すると凍るので何を育てるにしろ温度を上げて土を凍らせないために燃料が必要だった。 それでも人々は生きていて、世界は灰色ながらも存在している。 そんな世界にナツは生きていた。 「乾燥野菜、5種類くらい混ぜて適当にください」 暖かい店先でお金を渡しながらゴーグルも取らずに告げると、店主がカウンターの後ろの棚からいくつかの袋を下ろして、ゴソゴソと中身を量っている。 取れた作物や肉は、長くもたせるために乾燥させておくのが常識だ。 利点は軽くて栄養価が高いことだが、乾燥したままでは食べられないので手間がかかる。 頑張れば食べられないわけではないが。 「ちゃんと食ってるのか」 店主がぶっきら棒に声をかけてきた。 ナツは笑って頷いてみせる。 残念ながらゴーグルをしている上に口元も隠しているので、店主には彼女が笑ったことが分からなかった。
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