第1章

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空が、黒い。 地面も、黒い。 此処は何処だろう。息が苦しい。まるで何処か別の次元にいるような。 でも、誰かが其処に居るような、不思議な感覚。 「ようこそ。我が、この世界の主だ。」 何処と無く声が聞こえた。ドス黒い塊のような声だった。 「そなたの願いを、聞き入れた。」 私の事だろうか。 何を私は願ったんだろう。いや、それ以前に私は誰だろう。手が、冷たい。足も、冷たい。まるで石みたいに体が動かない。 「もう一度、やり直す機会を与えよう。」 指先に刺激が走った。温かい。 掌が、暑い。燃えるように。掌が熱くなっていく。 脚が、光に包まれいく。脚が、消えていく。 「貴方は、誰。」 これが出せる精一杯の声。 何処からもあの黒い声は聞こえない。 光が手を、胸を、覆い尽くす。そして、消えていく。 私は一体、どうなってしまうんだろう。 消えて、灰にすら慣れなくて、誰か大切な人の記憶から忘れ去られてしまうのだろうか。 大切な人って誰だったけ。 あれ? 記憶が途切れていく。視界が光に覆われていく。 薄れゆく意識の中。私の頭に声が響いた。 「我はそなたの運命を預けら_____」 冷たい。 鼻と頬に冷たい何かが落ちる。 濡れた服。どうやら雨が降っているらしい。 目を開けると、真っ暗な路地裏に私はいた。 灰色の空から黒い雫が落ちてくる。 あんなに熱かった掌も、消えていた体もちゃんと元通りだ。 見覚えのない場所。誰もいない。 不意に足音が聞こえた。 歩調を変えず、その足音は近づいてくる。 「...大丈夫か。」 差し伸べられた私と同じくらいの手。 今宵、運命が回り出す。
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