第1章

3/40
前へ
/40ページ
次へ
  「あの、若葉さん?」  だって、私の知る朱理さんは、どちらかと言うと気持ちを伝えたいタイプだと思う。ただ、それで終わっちゃうのが怖いのだろうけど。  仮に、望月さんが受け入れたとする。  そうなったらそうなったで、望月さんの家族は壊れてしまうかもしれないし。朱理さんにしてみれば、それをイメージしているのかもしれない。  だったら、側にいて現状維持をずっと続ければいい。それで、満足しようとしてるんだろうか。  そう思えて、仕方がない。 「えっと、若葉さん。どうしました?」  実はそれは、マスターに対する私の気持ちの基本思想みたいなもの。側にいる事は出来ても、その先に進む事が怖くて決められない。  私の場合、不倫じゃないんだけど。  お客さんの部下の人の事や、朱理さんの事を考えると、「不倫はやっぱり」って思っちゃう。  だって結果は、全部が良い事にはなり得ない。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加