第1章

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   そんな気持ちになっていた。  そこで、考えた事があった。  お客さんと部下の人の事。  朱理さんと望月さんの事。  岡田さんの事。  楓と屯田林くんの事。  私の周りの人々の恋愛や家族の事情は、それぞれに複雑だったりした。だけど、どれもがひとまずの形を作り出している。  それが一層、私を悩ませる。  じゃあ、私はどうしたらいいの?  マスターとの事は、側にいるというところまでは前進した。だけど朱理さんと違って、私のゴールはそこじゃ無い。  二人の距離は、特に縮まってない。  あの人の心が、私の方へと向いてくる実感も、少しだって感じられた事は無い。何も進まず何も退かず、ただ現状維持を続けているだけ。  このまま年を越し、四月が来て四年生になる。夏になって就活が本格化し、何だかんだでバタバタしている内に就職が決まる。  そして、マスターとの別れの時が来そう。
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