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「綾、それちょうだい」
「え……?」
九月中旬。
暑さがまだまだ残るこの季節。
暑いと言っても当然お腹が空くわけで、待ちに待った昼休み。
お母さん手作りのお弁当を美味しく食べ進め、最後にとっておいた大好きなエビフライをいざ食べようって時に、横から伸びてきた手。
呆気にとられている中、あっという間にエビフライは慶太の口の中へ消えてしまった。
「うん、やっぱ美智子さんが作るエビフライは最高だな」
指を舐めながらモゴモゴする慶太に、沸々と怒りが込み上げてくる。
「ちょっと慶太!なに勝手に人のおかず食べちゃってるのよ!全く同じおかずなんだから、自分の分があるでしょ!?」
「だってもう食っちまったからさ。どうせ綾のことだし、大好きなおかずは最後にとっていると思って」
「なっ……!」
信じられない!人が最後まで楽しみにとっておいたのに~!!
悔しくてキッと睨むものの、慶太は全く堪えていない様子。
お腹が満たされたからか、呑気に欠伸しちゃっているし。
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