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「やべ、眠くなっちまった。一眠りしてくるわ」
「はいはい、さっさと自分の教室に帰って下さい」
エビフライの恨みはいまだに消えておらず、まるで犬を追い払うかのように手を振る。
「なんだよ、冷てぇな。……あ、今日もバイトで遅くなるからご飯いらないって美智子さんに伝えておいて」
「分かったからさっさと戻る!」
「はいはい」
バカにするように返事をすると、ようやく教室から出て行ってくれた。
慶太の後ろ姿を見送りつつも、漏れてしまうのは大きな溜息。そして向かう視線の先は空になったお弁当箱。
「食べたかった……」
エビフライ、楽しみにしていたのに。
しばし途方に暮れていると、前から私に負けぬくらい大きな溜息が聞こえてきた。
「あー……本当、毎日毎日見せられている方はたまったもんじゃないんですけど」
「え……なにが?」
呆れながらそう話す目の前の人物。
一年生からの友達であり、いまやすっかり仲良しとなった須藤文音。
サラサラのロングヘアに整った目鼻立ち、切れ長の瞳で構成させるその顔はまさに誰が見ても美人としか言いようがない。
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