当たり前な日常

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福地綾。 この春高校二年生になったばかりの十七歳。 良し悪し特に何とも言いようがない標準的なスタイルに、唯一の自慢と言ったら大きな二重の瞳くらい。 勉強も運動も人並みで、もちろん通う高校も偏差値そこそこの高校。 「もう!ふたりとも早くご飯食べちゃわないと間に合わないわよ?」 「だって慶太が……!」 「だってじゃない!!」 トボトボと一階に降りて行くと、出勤前のお母さんは忙しそうに家事をこなしていて、呑気に降りてきた私と慶太を見て、苛々したようにピシャリと言い放つ。 つい目を瞑ってしまうと、私の横をすり抜けていく慶太。 高校生になってから毎日つけている爽やかなライムブルーの香りが鼻を掠めた。 「ほら、俺らがさっさと食わないと美智子さん片付けられないんだから、早くしろよ」 「はっ、早くしろって……!」 もとはと言えば慶太が……っ! そう言いたかったけれど、確かに慶太の言う通りなのは間違いない。 共働きで朝は忙しいことくらい、嫌ってほど理解しているつもりだから。 「言われなくても食べますよ。お腹ペコペコだし」
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