当たり前な日常

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ふたり分の重い鞄を持ったまま追い掛けるものの、足の速い慶太には到底追いつけない。 そんな私にハンデでも与えるように、何度も立ち止まっては「ノロマ」とか「ブス」とか罵声を浴びせてくる慶太に、私の怒りは募るばかり。 「も~怒った!!絶対の絶対に!!許さないんだからねー!!」 「別に綾に許してもらわなくても、全然困らねぇし!」 怒っているというのに、相変わらず人をバカにしたように言う慶太。 学校までの道のり、そんな慶太とずっと追いかけっこしてしまった。 ねぇ、慶太――。 今思えば、この頃が一番幸せだったのかもしれないね、私達。 幼い頃分け合った悲しい傷も、少しずつ癒えてきて毎日が楽しくて仕方なかった。 もう絶対ふたりで同じ悲しみを分け合うことはないと思っていたのに――……。 当たり前な日常。 この日常がいかに幸せなことで、かけがえのないものだってことを、私達は後々知ることになる。
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