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「痛っ!!」
「うわ~!」
宛もなく町を歩いていると、角を曲がった瞬間に尻餅をついてしまった。聞こえた声は二つ。一方は勢いに負けて地面に倒れ、一方は壁にしがみついた
「ごめん。大丈夫だった?」
差し出された手の先を見るとその人は、漆黒の髪を肩の辺りで無造作に切り風に遊ばせている。肩のラインは細く、肌は白い。服はスーツに似た型だが、スーツほど堅い感じはない。年齢は二十代といった所だろう。脚は比較的長く、身長は160センチ程しかないので男か女かは分からない
一通り観察すると厚意に甘えて手を取り立ち上がると、砂ぼこりを払い相手に視線を移した
「ありがとう。そっちは怪我はなかったか?」
「うん、大丈夫。ごめんね、急いでたから」
――急いでいたのにのんびりしてていいのだろうか
そう思いながらポケットからメモ帳を取出すと住所・電話番号を書き相手に渡した。渡された方は訳が分からなくてメモと相手を交互に見ていたが
「それ俺ん家の住所と電話番号。電話には夜しか出られないけど、何かあったら連絡してくれる?」
「ぁ…あ、ウチの住所と電話も」
「いい。また今度」
用件のみを告げると振り返る事もなく去って行った。残された者はメモを大事そうにポケットにしまい、腕時計を見ながら慌てて駆け出した
その時二人はまだ知らなかった
その後何度も会うようになる事を
二人の運命を
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