貴方と二人

2/5
前へ
/71ページ
次へ
「痛っ!!」 「うわ~!」 宛もなく町を歩いていると、角を曲がった瞬間に尻餅をついてしまった。聞こえた声は二つ。一方は勢いに負けて地面に倒れ、一方は壁にしがみついた 「ごめん。大丈夫だった?」 差し出された手の先を見るとその人は、漆黒の髪を肩の辺りで無造作に切り風に遊ばせている。肩のラインは細く、肌は白い。服はスーツに似た型だが、スーツほど堅い感じはない。年齢は二十代といった所だろう。脚は比較的長く、身長は160センチ程しかないので男か女かは分からない 一通り観察すると厚意に甘えて手を取り立ち上がると、砂ぼこりを払い相手に視線を移した 「ありがとう。そっちは怪我はなかったか?」 「うん、大丈夫。ごめんね、急いでたから」 ――急いでいたのにのんびりしてていいのだろうか そう思いながらポケットからメモ帳を取出すと住所・電話番号を書き相手に渡した。渡された方は訳が分からなくてメモと相手を交互に見ていたが 「それ俺ん家の住所と電話番号。電話には夜しか出られないけど、何かあったら連絡してくれる?」 「ぁ…あ、ウチの住所と電話も」 「いい。また今度」 用件のみを告げると振り返る事もなく去って行った。残された者はメモを大事そうにポケットにしまい、腕時計を見ながら慌てて駆け出した その時二人はまだ知らなかった その後何度も会うようになる事を 二人の運命を
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

155人が本棚に入れています
本棚に追加