ばあちゃんの烏龍茶

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ばあちゃん家はオンボロだ。 物置き部屋の引き戸は軋んで、ばあちゃんにしか開けられない。 「不便だね。私が大人になったら、初任給でここ直してあげるね」 私が言うと、ばあちゃんはからからと笑って頭を振った。 「そりゃあ嬉しいが、気持ちだけ受け取っとくよ。こいつはアルソックも真っ青の防犯システムじゃけえ、直っちまうと困るんじゃ。初任給は母ちゃんにフランス料理でも食わしたれ」 「じゃあ、そうする。そん時はばあちゃんにも奢ってあげるね」 「あたしゃ、遠慮しとくよ。高級食材はどうも口に合わなくてね。あたしはこいつが一番さね」 そう言ってばあちゃんは硬い煎餅を噛み割った。
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