2人が本棚に入れています
本棚に追加
ばあちゃん家はオンボロだ。
物置き部屋の引き戸は軋んで、ばあちゃんにしか開けられない。
「不便だね。私が大人になったら、初任給でここ直してあげるね」
私が言うと、ばあちゃんはからからと笑って頭を振った。
「そりゃあ嬉しいが、気持ちだけ受け取っとくよ。こいつはアルソックも真っ青の防犯システムじゃけえ、直っちまうと困るんじゃ。初任給は母ちゃんにフランス料理でも食わしたれ」
「じゃあ、そうする。そん時はばあちゃんにも奢ってあげるね」
「あたしゃ、遠慮しとくよ。高級食材はどうも口に合わなくてね。あたしはこいつが一番さね」
そう言ってばあちゃんは硬い煎餅を噛み割った。
最初のコメントを投稿しよう!