真夜中の淫らな囀り

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芳村上総(よしむら かずさ)はその日、少々機嫌が悪かった。 深山奏の隠し事も愛想のなさも普段と変わりなかったが、大学に進学して偶然再会して、天にも昇る気分だった。 中学生の頃の奏の事を長年、思い続けて来た身としては、つまらないそこら辺の女に奏を奪われるくらいなら、いっそのこと無理強いしても、関係を発展させてしまおうかと何度も考えていた。 初めて会った時も、手を出したのは上総の方が先だった。 中学で水泳部の区大会が開催された学校が、奏の在学していた学校だった。 同級生が水泳部だという奏に上総は一目惚れした。 海パンジャージの黒焦げいがぐり頭男の上総と、ブレザーに紺色のネクタイ姿の奏。 メドレーリレーの最中に雷が鳴って、 バケツをひっくり返したような走り雨が結構な豪雨で、上総は自分の出番が済んでいたし、制服組は軒がある場所へと避難していた。 上総はツレとはぐれたらしい奏の手を掴んで、人気のない北側の校舎の奥へと走った。 ここへ来たのは、その校舎がクラブハウス代わりに使われていた為、こういう大会がある時は、ビジターが更衣室代わりに空き教室を使っている。 昔はその校舎も生徒が大勢使っていたのだろうが、今は少子化で窓にかかっているカーテンが日焼けしていて、床の隅には埃が積もっていた。 上総は女子トイレに飛び込んで、個室の中で奏を抱きしめた。 少し雨で濡れた奏の白いワイシャツの裾を上総は引っ張り出して、ズボンのベルトのバックルに手をかける。 「ちょっ、何す…」 奏の抗議の声を、唇を塞いで阻止した。 唇が重なって、舌を突っ込み、ジッパーを下ろして中に手を侵入させる。 奏自身は慎み深いのか引っ込み思案のようだが、上総は上はジャージだが、下は海パン一枚に包まれているだけだから、性的に興奮すると反応があからさまになる。 上総は奏自身を握り、奏には上総の分身を握らせる。 上総は奏の舌を強く吸い、自分の手の動きに反応し始めた奏の雄を愛撫するのに夢中になっていた。 「んぁっ。」 奏は目を固く閉じていた。眦から涙がこぼれ落ちた。他人からの性的な接触は初めてだったと思う。お互いに経験不足で予測不能な状況だった。 オマケに外は稲光と叩きつける大粒の雨。冒険の最中のように興奮状態は続くし、こんな秘め事の邪魔はされたくない。
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