石油王の花嫁

29/42

28人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
互いの唇が離れるとアランと京介は寝室を出て応接室に行った。 ー応接室ー 父と母は隣同士でソファーに座ってアラン達が来るのを待っていた。 『アランが決めた相手なんだから喧嘩だけはしないでくださいよ』 『わかってる』 父は煙草を吸い始めた。 『煙草は辞めたんじゃないんですか』 『うるさいな、今日だけだよ』 『はぁ…』 母がため息をついたその時、応接室のドアが開きアランと京介が現れた。 父は煙草を灰皿に捨て京介に目を向けた。 京介はアランと共にソファーに座りながら父の気配を感じ緊張し始めた。 『俺の妻になる人を紹介するよ、吉田京介さんだ』 『吉田京介です』 京介は立ち上がり父と母に頭を下げると再びソファーに座った。 『母さんに喧嘩をするなと言われたが、俺はお前達の結婚を認めない』 『何でだよ…母さんも同じなのか…』 『私はあなた達の結婚は認めるわよ』 『母さんが認めても俺は認めない、帰るぞ』 父は立ち上がり応接室を出て行った。 『父さんの言葉は気にしないで、本当はあなた達のこと認めてるんだから…京介さん、アランと一緒に家に遊びに来てくださいね』 笑みを浮かべながら言う母の言葉に京介は『はい』と答えた。 『母さん、何でここに来たんだ』『カールが言いに来たのよ、アランが妻になる者と暮らしてるって…父さんが待ってるから行くわね』 母は応接室を出て行った。 『何でカールが知ってるんだ』 『なぁ、アラン』 『京介、すぐ帰るからおとなしく留守番してるんだ、いいね』 『1人じゃ寂しいよ』 『用事があるときはミナに言え、わかったな』 『わかった』 『良い子だ』 アランは京介の唇にキスをすると応接室を出てミナを呼んだ。 ミナは駆け足でアランに近づいた。 『アラン様、何でしょうか』 『今からカールに会いに行ってくるから京介のこと頼めるか』 『かしこまりました』 『じゃあ頼むよ、すぐ帰るから』 アランは家を出て馬に乗りカールの家に向かった。 京介は応接室を出て広い家の中を歩きまわった。 『金持ちは凄いよな』 『京介さん』 『……』 背後からミナに声をかけられると京介は足を止め振り返った。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加