石油王の花嫁

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『庭に咲いてる、花を摘んだのか』 アランは京介が持っているラベンダーの匂いを嗅いだ。 『何かあったのか?』 『……』 アランは京介に目を向けた。 『何かあったんだろ、もしかして俺のことで何か言われたんじゃないのか、例えば男を妻にするなんておかしいとか…』 『京介、お前に言ってないことがある、それを聞いて俺の前から居なくならいでほしい』 『俺にはお前しかいない、何を聞いても大丈夫だから』 『京介…』 アランは京介の手首を掴み歩くと京介の部屋に行った。 ー京介の部屋ー ラベンダーを机の上に置いた京介は『花を入れる入れ物をもらってくるから待ってて』と言って部屋を出ようとする京介をアランは止めた。 『京介、俺には婚約者がいたんだ』 『婚約者…』 『その婚約者の兄と俺は友達であり石油のライバルだ…京介…』 アランは京介の手首を掴んだまま京介を見つめた。 『手を…離せ…』 うつ向きながら京介は小声で言った。 『京介…』 アランは京介の顔を掴み上げさせると、泣いている京介にアランは驚いた。 『離せよ』 京介はアランを突き放し背を向けると『婚約者がいながら俺を口説いてたのか…お前の顔なんか見たくない…』と言って京介は部屋を出て行った。 『京介』 アランは京介を追いかけ家を出ていこうとする京介を止めた。 『話を聞いてくれ、京介』 『話なんて聞きたくない』 京介はアランを突き飛ばし家を出て行った。 『京介様…』 落ち込むアランの背後からミナが叫んだ。 アランは振り返りミナに目を向けた。 その頃、京介は森の中に入り迷っていた。 『出ていかなきゃ良かったな…』 森の中を歩き続け疲れた京介は大きな石の上に座った。 それからしばらくして京介の前にカールとルカが現れた。 『どうしたんですか?』 『道に迷ってしまって』 『もしかしてアランの…』 『……』 京介は悲しげな顔でうつ向いた。 『ルカ、先に帰ってろ』 『お兄ちゃん…何を考えてるの』 『良いから先に帰ってろ』 『わかったわよ』 ルカは家の方に歩いていった。 カールは京介の側に近づき『アランと喧嘩でもしましたか?』と優しい顔でカールが言った。 カールに目を向けた京介は優しく微笑むカールの姿に頬を赤らめ目をそらした。
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