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学校の中はとても静まり返っていて、人の気配がしない。そんな感じだった。しかしそれでも人はいて、授業をしている光景が目に入った。
雪乃の姿は何とも授業に身が入っていない。そんな様子だった。その姿を見て私も気が気ではなくなっていた。
その姿を見ていたらあっという間に時間が来て、チャイムと共に私は現実に戻ってきた。こんな私でも緊張するのかと思うと少し笑えてくるのはどうしてだろう。
「お早いお着きですね、理央さん。お母さん。それで、私の答えですが……」
決断に惑っている、そんな感じだった。
「……あれ、どうしてだろう。言葉が出て来ない。私は……答えを決めたはずなのに……」
やっぱり決めきれなかったか。こんな小さな子にこういう英断をさせるのは無茶な話だ。
雪乃はオロオロと泣きそうになっている。そうだよな。やっぱりそうだ。
「やっぱりな。それでいい。お前はそれでいいんだ。お前は私の元へ来るべきではない。だからお前は親の元へいけばいいんだ」
その言葉に涙をボロボロ流す。その姿に気持ちが揺るぎそうになる。
「どうして……そんなことを……。私は、理央さんのところへ……行きたかったのに……」
その言葉を聞いて、私は心が揺れそうだった。だけど。
「馬鹿だなお前。他人なんていつでも会える。親なんてそうそう会えるものじゃねぇんだ。そんな人間は貴重なんだぞ。この世で最も大事な人間なんだ。もっと大事にしてやれ」
……照れながらにこう言った。正直クサイと思う。しかし彼女にはこの言葉が必要だと思った。
「……そうですか。そうですね。そうします。ありがとうございます、理央さん。私はお母さんの元へ行きます。でも、たまには遊びに行っていいですか?」
「……あぁ、もちろんだ。顔を見せに来るなら構わねぇよ。親を、大事にしろよ」
そう言って私は立ち去ろうとする。すると声がする。
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